■大野紫、開発のきっかけ
大野醤油は380年の歴史があり、昔から甘味を加えた甘口醤油(うまくち醤油)が特徴である。
この「うまくち醤油」は、現在九州地方でも造られており、大野醤油だけの特徴ではないため、名産地として誇れる独自の醤油ができないか?と考えたのが開発のきっかけであった。
そんな折、町の老人が子供の頃聞いた話に、「昔、美味しい醤油があった。その醤油は甘味の質が、今のものより格別においしかった。」また、「しょうゆ諸味に米麹を加えて造った醤油らしい」と言う情報を得た。
大野町に伝わる各種文献を調べたところ、その伝説の醤油について記述されている書物を発見した。
文献によると、大野の醸造職人が江戸時代に行っていた製法であることが判明した。
■味噌と米麹と伝統製法
■伝説の味へ、試行錯誤
それから約2年間、伝説の味を目指し試験仕込を重ねた。米麹を用いる手法でぶつかった最初の壁は、甘味の問題だ。
甘酒のように、糖化(お米の成分を甘味に変える)という工程を用いない。よって、天然醸造で十分な甘味を得るためには、発酵・熟成にかなりの時間かかるのである。
次の壁は、醤油のうま味を得る発酵と、お米の甘味を得る発酵を同時に行うため、もろみと米麹の比率、添加するタイミング、温度管理など、もろみの発酵管理が、かなり微妙な作業となった。
幾度に渡る試行錯誤を重ね、遂に「うま味」と「甘味」のバランスがとれた醤油もろみが完成した。
驚いたことに、もろみと米麹の比率は、江戸期の文献に記されていたものとほぼ同じであった。